
こんにちわ、美湖エンジニアリングの神林です。
平素より、美湖エンジニアリングのホームページをご覧いただき、誠にありがとうございます。
弊社ブログは、2026/2/11に「薪ストーブの排ガス測定」を紹介しました。
お客様要望による測定が実現しましたが、その続報で排ガス測定結果についてお話します。少し難しい話ですが、最後まで読んでいただけましたら幸いです!
排ガス測定とは、工場や事業所から排出される大気汚染物質(ばいじん等)の濃度を測定し、大気汚染物質の各濃度数値が、環境省の法令(大気汚染防止法)で定める規制値内か否かを判断する業務をいいます。
一般的には燃焼を伴う産業機械(ボイラー、工業炉、焼却炉、ガスタービン、ディーゼル・ガスエンジン等)の技術評価、環境省の法令規定値を満たすことが義務付けられていますが、薪ストーブは環境省の法令対象外ですので、以前から「排ガスの各数値はどれぐらいなのだろう」という素朴な疑問があり、今回の計測は科学的に定量評価できる機会と捉えて対応いたしました。
ここで注意したいのが、薪ストーブは前述のとおり法規制がないので、他メーカとの比較ができないということです。得られた計測結果は「自主計測結果」であり、この数値が良いのか悪いのかという判断は控えさせていただきます。このような自主計測結果の公表は、おそらく国内初と考えています。
少し前置きが長くなってしまいしたが、本題に入ります。
薪は滋賀県伊吹山山系のアカマツの乾燥薪(含水率平均15%)を使用し、弊社店舗内の自社製薪ストーブ(すみれ)で、専門計量分析業者がJIS規格の測定方法・分析方法に則り、行いました。各測定結果は以下のとおりです。
| 計量の対象 | 計量の方法 | 計量の結果 |
| ばいじん濃度(ダスト濃度) |
JIS K 8808 円形ろ紙法 |
0.14 g/m3 |
| 同上濃度(O2=16%換算) | 同上 | 0.050 g/m3 |
| 全硫黄酸化物濃度 |
JIS K 0103 イオンクロマトグラフ法 |
0.13 volppm |
| 硫黄酸化物排出量 | 同上 | 0.000020 m3N/h |
| 窒素酸化物濃度最大値 |
JIS K 0104 化学発酵法 |
53 volppm |
| 同上濃度(O2=16%換算) | 同上 | 20 volppm |
測定データは、他に排ガス量(湿り、乾き)、排ガス組成(CO2、O2、CO)、排ガス水分量も測定しています。
なお、ばいじん濃度と窒素酸化物濃度は、排ガス中の残存酸素濃度でばいじん濃度が異なるので、そのままの測定データでは相対比較ができませんので、JIS(国際ルールも同様)は、排ガス中の残存酸素濃度換算により比較できるようにしています。薪ストーブは法規制外なので決められた換算率がありませんが、ここでは酸素濃度16%換算としました。
薪ストーブ開発時は、NOX、煙を計測器で計測しながら、薪ストーブ燃焼室形状・空気取入口の位置やサイズの試行錯誤で商品化しましたので、今回の各測定データ(特にばいじん濃度)はある程度数値予測していましたが、私は予測に近いデータで内心ほっとしています。
次に、私の今までの経験・知見からばいじんや窒素酸化物の発生傾向を述べます。
ばいじん量(ダスト濃度)・窒素酸化物濃度は、薪ストーブの燃焼性能に関わり、硫黄酸化物濃度は、薪由来に関わります。
ばいじん濃度(ダスト濃度)の数値が高くなる原因は、
① 燃焼用空気が不足して不完全燃焼を起こしている
② 燃焼用空気が多すぎて、空気と薪燃料との混合が不完全
③ 薪の入れ方で空気との混合が不完全
④ 薪に水分が多い
以上が考えられます。①の場合は灰色煙や黒煙が発生し、②③④の場合は白煙が発生します。いずれもヒューマンエラー等が引き金となり、煙発生の原因となります。
硫黄酸化物は、薪に含まれる硫黄分と燃焼用空気と化学反応して発生する物質です。薪ストーブに硫黄分がないので、この硫黄分は薪由来となります。残念ながらこれだけはどうすることもできませんが、薪に含まれる硫黄分は極めて微量なので、問題ない範囲と考えます。

窒素酸化物濃度が高い場合、薪ストーブ燃焼室内に高温領域が(1300℃以上)存在しています。窒素酸化物は一般的にNOXという化学物質で、光化学スモッグの原因物質とされています。発生原因は燃焼現象であり、燃料中の窒素分と空気中の窒素が燃焼温度1300℃以上時に酸化反応由来があります。このNOXをできる限り抑えることも次の開発テーマになると考えます。
なお、私の燃焼装置の開発経験は、窒素酸化物の数値とばいじん濃度の数値はトレードオフの関係にあり、ばいじん濃度が下降すると窒素酸化物濃度が上昇し、ばいじん濃度が上がると窒素酸化物濃度が下降する傾向でした。薪ストーブも同様の現象があり、なかなか難しい課題ですが、薪ストーブの窒素酸化物濃度はそれほど高くないため、優先は「ばいじん濃度低減」と考えています。
今回の計測は、アカマツの成分由来により多少の計測数値差異はあるでしょうが、一般的な針葉樹・広葉樹等の自然物薪燃料に対して、ほぼ同様の元素組成なので同様の傾向と考えています。
ただし、人工的な材料を施した材料(例えば、ベニヤ板、防腐処理、塗装の塗布、クロス張り、接着剤付着等)は除きます。
これらの測定データにより、自社製薪ストーブの実力を確認することができました。今後は海外製薪ストーブと比較して、「自社ストーブの性能実力がどの位置にいるのか」を捉え、今後の開発の糧にしようと考えています。
今回の計測・分析は、お客様と計量分析業者様の多大なるご支援により実現しました。この場を借りて深く御礼申し上げます。誠にありがとうございました。
さらに詳細情報を知りたい方は、どうぞお気軽にお問い合わせください。
美湖エンジニアリング
代表 神林 寿英

