「こんなときどうする」シリーズでは、美湖エンジニアリングが国産薪ストーブの開発を通じて経験してきた失敗や改良・改善の積み重ねを元に、安全に薪ストーブを楽しむためのポイントを紹介します。
薪ストーブは、正しく使うことで長く快適に楽しめる暖房装置です。しかし、使い方を誤ると、薪ストーブ本体や煙突の損傷、思わぬ事故やけがにつながることがあります。
【失敗談】
開発当初のころでした。焚き始めから45分ぐらいたったころに少し寒かったので、少し大きめの広葉樹を2本と中太さの針葉樹を3本一気に入れてしまい「こりゃ入れ過ぎた」を思い、薪を1本だけ出そうとしましたが、すぐに炎が上がり、扉を閉めてそのまま様子をうかがっていました。炎はみるみる大きくなり、薪ストーブの燃焼室内は炎がいっぱいに広がり、天板温度もすぐに300℃越えてピークは350℃になり、ガラスに炎が時々当たりながら燃え上がり、少し怖いくらいの炎となりましたが、その炎も約20分でおさまり、いつもの緩やかな炎になりました。ちなみに、ストーブや煙突は、損傷もなく大丈夫でした。
【原因】
「入れようとする薪量の大きさ(容積)のイメージ」をせずに「ポイポイ」と調子よく薪を入れてしまったことによります。薪を入れる動作は、慣れてくると感覚的な日常動作となります。そこに落とし穴があると考えています。
【対策】
薪は同じ重量、同じ形状(長さ・太さ)はありませんので、同じ炎の状態・温度にすることはできません。だからといって、いちいち薪の重量を量ったり、長さや直径を測ったりすることは面倒くさいのでやりませんね。原因にもありますように薪の投入は日常化しますが、そこで、「感覚」がとても大切になってきます。その「感覚」的なアドバイスを紹介します。
入れるタイミングは熾火状態か、ひょろっと小炎が上がっている状態
入れる前に薪を重ねたとき、高さが約15cmイメージ
薪を重ねたとき、燃焼室の空間高さの約1/2以上ある
基本的にはご使用のストーブメーカーの取扱説明書を遵守した上で、以上のような感覚でやってみてください。
Q1;薪の入れ過ぎは他にどんなことが起こるの?
Ans1;様々な不具合が発生します。
薪ストーブの燃焼室は、薪を置いた時のスペースと燃え上がる炎のスペースを考えて設計されています。薪の入れ過ぎは、火炎が必要以上に大きくなり、不完全燃焼を引き起こし、煙が発生してしまいます。開発途上で何度も経験しました。これは乾燥薪であってもある程度の時間経過(約20~25分)しないと煙は消えません。また、「薪を多く入れれば部屋はすぐ暖まる」というイメージを持ちそうですが、実験結果では、「薪を入れる量を増やしても部屋温度が15℃上昇するまでの時間はあまり変わらない」と、「熾火になる時間もあまり変わらない」がわかりました。
煙の発生でご近所迷惑・トラブルにもつながってしまう
薪を入れる量を増やしても早く暖まることはない
熾火までの時間はあまり変わらないので、燃費が悪くなっている
場合によっては、薪ストーブや煙突を損傷させてしまう
以上から何もいいことありません。
Q2;広葉樹と針葉樹では薪を入れる量は違うの?
Ans2;違います!
針葉樹は火力が強い反面、燃焼時間が短いです。広葉樹は火力が針葉樹よりも劣りますが、火持ちがいいです。弊社内実験で、薪追加量の目安を作るために薪の樹種、太さと本数を変えていろいろ試していました。その結果導き出したお奨め薪追加方法と投入量は、
広葉樹だけの場合、太薪(8~12cm)で2本、中薪(5~8cm)で3本
針葉樹だけの場合、太薪で1本、中薪太さで2本
これは、弊社薪ストーブ(鋼板製輻射式)を使用する場合の目安を示しています。
Q3;針葉樹と広葉樹を混ぜて燃やしてもいいの?
Ans3;その方法がベターと考えています。
私は、焚き始め以外の追加薪を入れる場合、場面に応じて薪の入れ方を変えています。
ストーブによって取扱いが異なりますので様々でしょうが、弊社薪ストーブ(鋼板製輻射式)を使用する場合、以下のような目安で薪を追加しています。
通常時(天板温度200℃前後);広葉樹中薪を2~3本
ストーブ周辺を早く暖めたい時;広葉樹中薪2本+針葉樹中薪1本
天板を200℃以上にしたい時;広葉樹細薪1本+針葉樹中薪2本
一気にストーブを暖めたい時;針葉樹中薪3本+針葉樹細薪2本
※40~45cm長さの薪を使用し、細薪は直径約5cm未満、中薪は直径5~8cm
と、いった具合に樹種を混合して薪追加量も変えています。薪ストーブより様々ですので、ご参考にしていただいて、皆さまで最適方法を見つけてくださいね。
森林組合や製材所等で扱っている樹種の多くは、針葉樹です。林業の間伐材、未利用材のほとんどが針葉樹で、私はこの針葉樹を燃料として利用することが、地域の循環社会、地産地消につながるものと考えています。
薪燃料として敬遠されがちな針葉樹ですが、弊社は場面に応じた使い方(針葉樹と広葉樹を混合した投入方法等)を提案して、できるだけ再利用していきたいと考えています。
国産薪ストーブ開発当時から現在に至るまで、私の失敗や経験を元に、「こんなときどうする」を綴っていくシリーズです。「ありゃ!どうしよう」をまとめてみました。
皆さまのお役に立てれば幸いです。これからも順次紹介いたします。
美湖エンジニアリング
代表 神林寿英
国産薪ストーブの開発・製造に携わり、安全性について数多くの試験・改善を重ねてきました。開発時の経験や失敗から得た知見を元に、薪ストーブをより安全に長く楽しむための情報を発信しています。
美湖エンジニアリングは、国産薪ストーブの開発・製造を行なっています。薪ストーブ選びや設置についてもご相談ください。
https://miumi-eng.com/what-to-do-in-this-situation-part-6/

